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進む大学改革

◆ 大学改革の目的

 

「大学の役割は民間企業と同じだ。原材料を仕入れ、加工して製品に仕上げ、卒業証書という保証書をつけて企業に出す。これが産学連携だ」

 

 これは2005年、私立大学の連合組織「21世紀大学経営協会」の総会席上での発言です。1980年台以来40年近くにわたって、行政改革の一環として「大学改革」が進められてきました。特に2013年以降、安倍首相が設置した「教育再生実行会議」が指揮する形で、急速に改革が進みました。京大の役員会独裁が作られたのも、その一環です。

 さらに最近では、17年12月の内閣府「総合科学技術・イノベーション会議」で上山崇洋慶応大学教授が提出した資料では、「『投資に見合うリターン』を生み出し……『知識産業』へと脱皮する必要がある」とまで言われています。

 このような流れの中で今、大学は「就職予備校化」への道を進んでいます。私たちは、大学をGDP(国内総生産)創出の道具とする大学改革に反対しています。

 

 

◆ 国立大学法人化

 

 「大学改革」の大きな転換点となったのは、2004年の「国立大学法人化」です。この制度は「目標・計画の設定や定期的な業績評価と行った仕組みを通じて国の意思を法人運営に反映させうる」(自民党文京部会報告)ものとしてつくられました。その柱は、以下の3つです。

 

 ① 大学の運営計画への文部科学省評価を基に運営費交付金の分配を決定する

 ② 「経営協議会」創設など、大学の人事・予算権への産業界・官僚の直接介入

 ③ 学長の権限強化(教授会自治や学生自治の形骸化)

 

 こうして、教育と学問の商品化・私物化が進められたのです。国立大学でのこの制度のスタートとともに戦術の「21世紀大学経営協会」もつくられており、両者は一体のものだと言えるでしょう。

 この時期、全国大学で学生自治寮や学生管理のサークル棟など、「学生自治の砦」が次々と破壊されていきました。大学の最大の構成員であり主役である学生側の抵抗を押しつぶして、大学改革は強行されていったのです。

 

 

 

◆ 京都大学における改革

 

 では、京都大学においてはどのような形で改革が進んでいったのでしょうか。以前は京大では事あるごとに学生と大学間の団体交渉(団交)が行われていました。特に同学会は総長との交渉権を持っていたのです。しかし国立大学法人化をめぐる2003年の総長団交を最後に、総長の交渉は行われなくなりました。その後も学生担当の副学長との団体交渉は行われていましたが、有志団体としては2011年の反原発団交(※1)を最後に、寮自治会としては2016年の確約引き継ぎ団交(※2)を最後にして団体交渉は途絶。さらに、2016年に反戦バリケードスト関係者への弾圧事件(※3)を機に、副学長による情報公開連絡会(※4)も中止されました。

 また、教授会も決定権を奪われました。2011年に国際高等教育院(いわゆるKKK)の設置が発表。一般教養科目の管轄を人事権ごと各学部の教授会から奪うもので、総合人間学部教員を中心に反対運動を展開したものの、強行されました。その後、キャップ制、TOEFL-ITP試験の強制、GORILLA導入、GPA導入などが全学的に一律で進められました。また、2014年の学校教育法改正によって教授会は「学長等の求めに応じ、意見を述べる」だけの存在とされ、多くの権限を奪われました。現在、大学本部が圧倒的な権力を握り、学部長クラスですら逆らえない状況になっています。

 

 立て看板やビラまきなど学生活動への規制強化、学費の高騰、就職活動への傾斜、果ては研究資金欲しさの軍事研究の開始(※5)……結局のところ、大学改革の本質は戦前と同じです。それは、大学・学問を社会全体のためのものとすることではなく、国家・産業界の利益に奉仕させることです。ぜひともに反対の声を上げましょう。

 

 

※1 有志団体「大学奪還学生行動」によるもの。原発反対の主張をする学生が御用学者の講演会から排除された事件を謝罪させた。

※2 吉田寮・熊野寮の自治会は歴代の学生担当の副学長との間に確約を結んできた。確約には次代に引き継くことも明記されているが、川添副学長は現在拒否し続けている。

※3 「威力業務妨害罪」で6名を逮捕。その後全員不起訴で釈放されたが、同じ件で4名の京大生に放学処分がくだされた。

※4 副学長から直接、大学内で行われていることについて情報公開する場。学生は誰でも参加できた。

※5 今までも米軍マネーの流入があったが、2015年から防衛省から大学などに研究委託する「安全保障技術研究推進制度」が開始された。同学会のストはこれと安保関連法に反対するものだった。