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9・30阿津・吉田さん第6回公判の報告(京大ビラまき弾圧裁判)

菅野「上司の命令で行った。理由は考えていない」

 9月30日、京都地裁第3刑事部(寺田俊弘裁判長)で阿津良典さん、吉田耕さんの建造物侵入容疑の第6回裁判が行われました。京大生を先頭に約30人が傍聴に詰めかけました。

 この裁判は、並行して行われている髙田暁典さんと先日保釈を勝ち取った斎藤郁真さんの裁判同様、大学の自由・自治を問うものであり、国の大学改革との最先端での攻防です。

 今回は、大学当局の証人として、菅野隆道(学生課職員、通称「おにぎり君」)と中村一也(総務課長)が出廷しました。

 

 菅野は普段から学生をビデオ撮影する業務を担い、同学会のビラ回収も行っています。それらが裁判において「犯罪」の証拠として挙げられているのです。これに対して弁護士から、「なぜ撮影行為を行ったのか、特定のビラを回収することについて、法的整合性や大学当局のうたう『自由の学風』との整合性は考えなかったのか」と問われ、「(ビラ回収の)理由は知らない」「上司の命令で行った。理由は考えていない」と逃げ続けました。

 同学会のビラだけ回収したことや、かかわっている人を撮影したことが「法律に違反するとは考えなかったのか」という質問にも、「考えない」という趣旨の発言をし、傍聴席からは「お前は人形か!」「上司の命令なら人も殺すのか!」と弾劾の声が上がりました。

 

中村総務課長「価値判断は大学がやる」

 中村総務課長の証言を一部抜粋します。

 

中村「平成28年9月30日に学外者によるビラまきや宣伝行為を禁止するという告示は、バリストがきっかけで出した」

中村「告示を使って12人を出入り禁止にした。掲示は基本的に学内のみ。ホームページ上には名前を記載しない形で通告を宣伝した」

中村「ビラまきや宣伝という教育環境を妨害する行為が問題なのであって、ビラに書いている思想や主張は関係ない」

 

弁護士「京都大学は同学会のビラの回収をしているが、学内者・学外者関係なく同学会に関係していればビラ配りを弾圧するのか?」

中村「ビラ配りだけでなく、厳正な対処をする」

弁護士「なぜ、ビラを回収するのか」

中村「学生が、同学会のように反戦バリケードストライキや立て看板撤去の妨害など危ない行動をする団体に巻き込まれる可能性があるから、ビラを回収している

弁護士「それは、学生がビラを見て自分たちで判断することではないのか

中村「その価値判断は大学がやる

弁護士「それは同学会だから弾圧するのか」

中村「同学会に限らないし、ビラ配りだけに対処するものではない。他にも、反戦バリケードストライキのような無茶苦茶なことをすれば当然処分の対象である」

 

 このやり取りの中で最大の問題点は、「思想や主張は関係ない」としながら、「巻き込まれる可能性がある」「大学が価値判断をする」として、学生がキャンパスで触れる思想や主張を選別しているという点です。学生の自由意思を根本的に否定しています。

 これはつまりどういうことを意味するのか。例えば、同学会執行委員会が立て看板についてシール投票を行ったところ、「存続・発展」を求める学生が大多数でした。しかし京大当局は学生と一切話し合うことなく、一方的に規制を強行しただけでなく、立て看板撤去に抗議した学生を停学処分にするなどの弾圧を進めています。つまり立て看板の存続を求める学生の主体を否定し、暴力的に当局側の思惑を押し付けているのです。

 また、同学会の2015年反戦バリケードストライキに対して、京大当局は「威力業務妨害」として刑事告訴しましたが失敗しています。その後、一切の話し合いを拒絶したまま、京大当局は4名の学生に処分を下しました。バリストが「危ない行動」だというのも、「大学の価値判断」に過ぎません。

 

 勝手な価値判断をもとに、ビラや立て看板といった当たり前の「表現の自由」すら禁圧しているのが今の京大です。「問題は思想や主張ではない」と言いながら、当局の意思に従わない学生の排除を狙っているのは明らかです。大学を批判する行動や言説を禁圧し、「逆らうな、ただ受け入れろ」とばかりに管理強化を進める京大当局を許してはなりません。

 

「施設管理権」で弾圧を正当化

 こうした一方的な弾圧を正当化する根拠として、中村総務課長は「告示・立入禁止の法的根拠は国立大学法人法が定めている『施設管理権』だ」と断言しました。

 

 2004年に国立大学が法人化される際に、今まで国の管轄だった大学キャンパスは、代表である大学総長の管理下に置かれました。さらに「ガバナンス強化」の名で総長権限の強化が進むのと一体で、ますます大学空間は総長の私有財産として扱われるようになっています。

 つまり「大学は総長のモノだから何をやってもいい」という宣言です。実際、全国の大学でも、総長を頂点とする役員会が独裁的な権限を握り、政府・財界に忖度して改革を進める一方で、教授会や学生団体の意向がとことん無視される体制が作られています。大学の学問や教育が一部の人間の都合のいい道具として扱われることがどれだけ危険なのかは、例えば電力会社の原発マネーを背景に作られた「放射能安全神話」を考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

 

 中村総務課長は「施設管理権」の所在について、「総長が管理権の代表者を務めているが、実態的には各部局長が代理で権限を持っている」などと言って山極総長に責任が行くことを回避しようとしています。しかしこの裁判の核心部分である「学内立入禁止」の通告も、乱発される学生処分も、さまざまな管理強化も、決裁しているのはすべて山極総長です。ここをはっきりさせて、未だに口先で「自由の学風」などとうそぶく山極総長を法廷に引きずり出しましょう!

 

 一連の裁判は「大学が誰のものか」をめぐる非常に重要な闘いになっています。ただ、裁判所は必ずしも「中立・公平」ではありません。法学部の学生が「裁判所は令状の自動発行機」(警察の逮捕・家宅捜索などを無制限に許可している)と言っているのを聞いたことがあります。また、「裁判官が権力側に不利な判決を出すと左遷される」というのもよく聞く話です。

 必要なことは、裁判で明らかにされたさまざまな事実をしっかり宣伝し、仲間を集め、今までの力関係を覆す闘いを始めることです。京大当局との主戦場は、何よりもキャンパスです。逮捕や処分の弾圧に負けず、全京大生の思いを束ねて闘う真の全学自治会として同学会を発展させていきましょう!